ツキ呑み⑧「植物とカメと前傾姿勢の巻」

 呑みたい気分でツキイチエッセイ

 「植物とカメと前傾姿勢の巻」

 

 サンセベリアとミリオンバンブーとニンジンガジュマルとスパティフィラムの大鉢小鉢がどんどん増えて、唯一の出窓と狭いリビングを侵食しています。もともと観葉植物にも切り花にもほとんど興味関心がなかったのにいつの間にこんなことになったのだろう。新年早々、片付いていない部屋を眺めながらそんなことを考えていました。手入れが行き届かず適正な処置もできず、増え過ぎた、伸び過ぎたと言ってはやみくもに株分けをし、絶えたかといぶかる間にも蘇りくる植物たち。よくぞ育ってくれたものです。

 

 飼い始めて15年が経とうとしているミシシッピアカミミガメもまた、狭いリビングの床を占拠しています。何年か前に約30センチの大きさに育って以降変化なく、日よけ用の疑似岩と水を入れた衣装ケースの中で大人しく日々を送っています。なにせカメなので何の自己主張もしません。それをいいことに半月ほどほったらかしということもざらで、冬ならまだしも食欲旺盛な暖かい時期に放置してしまった時は、餌を与える際に猛烈な勢いで水しぶきを上げるので、彼(たぶん♂)なりの抗議なのだろうと申し訳なく思います。病気ひとつせずよくぞ育ってくれているものです。

 

 飼い始めて2年と3か月が経とうとしているゴールデンハムスターもいます。二台のハウスを連結して広い空間にし、外には出しません。神経質な女の子で、手をだすとかみつくため、エサ箱にそっと餌を入れ、水を替え、掃除をするだけです。本来「小動物と触れ合いたい」という思いで購入したはずですが、結局見守りに徹しています。そろそろ老齢ですが、飼い始めた頃と同様、激しく警戒し抵抗する元気さを保っています。こちらもまたよくぞ育ってくれました。

 

 植物やペットと同じ扱いをするわけではないけれど、こうしたワタシのやみくもな対応は、子育てにおいても反映されている気がします。無事に育ってくれていることに頭が下がる思いです。

 

 未就園児から小学校2年生くらいまでの小さなお子さんが対象の「おはなし会」の現場を体験すると、子育てとはこうであれという理想を見る思いがします。自分を丸ごと埋めようとするかのように、絵本や話し手に向かって小さな体を前のめりにさせている様子を見ると、子どもはかくも「おはなしの世界」が好きなのだと思い知らされます。そして、果たしてこうした前傾姿勢の我が子を見たことがあるだろうかと考えると、テレビ画面の前にいる時の姿しか思い出せず、やはりやみくもな子育てをしてきたのかと切なくなります。

 

 『パパもママも楽しもう! 絵本のよみきかせ&子育てのおはなし』という講座に参加してきました。絵本ナビ取締役の奥平氏が講師となって、パパ視点での読み聞かせや育児について、お話をしてくださいました。小さなお子さんを目の前に、読み聞かせもしてくださいました。男性の響きのある低音と一緒に声を張り上げ、体を使う読み聞かせは、平面の絵本を手に取って遊べる立体の玩具のような存在感に押し上げていました。きっと子どもは何度も「あの本読んで」「あの本で遊んで」と"パパ"にせがむに違いありません。

 

 朗読やアナウンスでは当たり前なのに、絵本の読み聞かせとなると男性が登場する機会はとても少ないし、女性もそれを求めることを失念しがち。同じように"ママ"もまた、"パパ"に読み聞かせを頼むことなど思いつかないかもしれません。でも、次にやるべき家事が頭から離れないママよりも、パパの方が子どもと一緒に楽しめるはず。

 

「絵本の読み聞かせは子育てのハードルを下げるもっとも簡単な方法」だそうです。読み聞かせ未体験の"パパ"たちにはぜひ、声に出して本を読むことの楽しさを知ってほしいし、また、お子さんが話し手であるパパに向かって前のめりになる様子を記憶に刻んで欲しいものだと、やみくもに子育てをしてきたワタシは切に願うのです。

 

 2017/1/30