白大島と雪女

撮影 : Music Lovers.Tokyo

 

 

「あなただけに読む朗読会」vol.3~ある日のことでございます~芥川竜之介

「あなただけに読むための朗読教室」第一回発表会

 

この朗読会への出場を決意してから、約半年になるでしょうか。長きに渡ってプレッシャーと戦ってきた (泣) 発表会を無事終えました。

 

朗読士@小堀望氏主宰の朗読会で『雪女』を発表させていただきたい !!

その思いは強かったものの、レッスンを始めてみれば、ゴールは果てしなく、遠くかすみゆくばかり……( ;∀;)

 

いったいぜんたいどうなることかの不安ぬぐいきれぬまま迎えた本番。しかしスタッフのみなさんをはじめ、かかわる方全員の意識の高さとプロ根性を目の当たりにして、少なくとも足をひっばることだけはすまいと必死に意識レベルを引き上げるよう努力しているうちに、いつしか無事終えていました。

 

早めの出番だったため、同じく発表者ながら圧巻の朗読をされる第1部の皆さんの朗読と、それこそ語りの権化よろしく迫力のある小堀さんと池内さんによる第2部のステージもゆったりした気分で堪能させていただくことができました。

 

わたしの『雪女』に関してもまたいろいろなお声を頂戴する中、
「怖い怪談だと思っていた『雪女』が、こんなに哀しく切ない物語だと初めて気づかされて、胸が詰まった」
という感想を頂戴することができました。これこそがこの物語に惹かれる肝でしたので、本望というしかありません。

 

ところで恥ずかしながら着物とはほとんど縁を結ばずに生きてきたため、着物姿での朗読には逡巡も覚悟も苦労も山盛り(笑)ありました。

けれど朗読したい作品は、なにせ『雪女』。
き・きものなんてムリムリムリムリムリム……という叫びも吹雪に吸い込まれるがごとく消え失せ、同時にこれまた奇跡的にイメージぴったりの白い帯を貸していただけることになったり、着付けをしてくださる方が見つかったりして、結局「初めからそのつもりでしたええもちろん」的に白い着物姿をご披露することができました。

 

呉服屋さんの強烈な推しに降参し母と一緒にクレジット契約を結んでから30年以上(!!)、しまいっぱなしだった白大島のしつけ糸を取り、頑固なたたみじわの取り方も教わって、ついに着用することになったわけで、早速実家の母親に「なんと、アレ、着ちゃったよぉ~」と電話で報告すると「そおかね~」と母も感慨深げでした。きっと白大島も本望だったことでしょう。

終演は21時近くでしたが、駆けつけてくださった皆さんは最後までご観覧くださいました。本当にありがとうございました!!

 

 〈左〉

小泉八雲『雪女』の訳書は数多く出版されているので、絵本や児童書にも目を通しましたが、最終的にこちら田代三千稔訳のもの(角川文庫)を選びました。この表紙も魅力的です。

 

〈中〉

「白大島を持っている」のはわかっていたけれど、見ることすらしなかったので、今回出してみて驚きました。こんなに物語を感じる柄だったとは。まるでこの日の登場を待ってくれていたかのよう。

 

〈右〉

台本は衣装が決まってからと作るつもりでしたが、衣装が決まったのも一週間前だったので、急いでイメージに合う紙を探しました。一度は雲龍紙を使って仕上げたものの、いまひとつ弱いかも、という感覚が残り、なにかしら細工をしてみようかと出かけた文房具売り場でみつけたのがこの迫力満点のもみ紙。本番は明後日 !というタイミングでしたが迷わずイチから作り直しました。

 

 

今回の出場にあたっては、運命的な出会いや導きを感じる場面に多々遭遇し、これまでの人生を振り返るほどの複雑な気持ちになることもありました。この朗読会はきっとわたしにとっても、関わる方皆さんにとっても何かしら特別な意味合いを持つ事になったり、奇跡的な何かが起きたりするのでは……。そんな感覚すら覚えました。

 

前に進んでさえいれば、良い連鎖に恵まれる。かかわった皆さんにもきっとなにがしか良いことの芽が生まれたはず。そう信じられる朗読会でした。何もかもに心から感謝です。

 

2019/4/21