ツキ吞み⑭「コンテストとにわか審査員とプチ旅行の巻」

 

吞みたい気分でツキイチエッセイ

 「コンテストとにわか審査員とプチ旅行の巻」

 

 10月7日、京都で「第9回 青空文庫朗読コンテスト」が開催されました。

 

今回初めて会場まで足を運び、高校生10名、一般の方29名、合計39名の朗読を直に聴かせていただきました。たまたま一般審査員に選ばれたので、恐れ多くも会場中央の特等席に着席して拝聴させていただくこととなりました。

 

最初は高校生10名によるコンテストです。早速、制服の着こなしのお手本のようなきちんとした佇まいにいちいち心打たれたのは、同じ高校生の娘を持つ親の心境に他なりません。

 

きちんとした高校生の皆さんから発せられる声は、力強く滑らか。ひとつひとつの言葉に意味を持たせる技術もあり、朗読作品を深く理解していることが察せられます。また、台本に視線を落とすところと、台本から目を離して、客席に視線を向けるところも明確に分かれています。おそらくほぼ全員が台本などなくても朗読できてしまうんだろうと感じられ、そこからうかがい知れる練習量の膨大さに圧倒される思いでした。

 

――まじめに努力する高校生って、つくづく無敵。

そんなことを考えながら、迷わず全員に〇をつけさせていただきました。感動しました。ありがとうございました。

 

さてこのあとは、一般の部(1名欠席とのことで)29名が続きました。こちらでは10名ごとにおひとりかお二人ずつ「わたしが好きだと感じた朗読」を基準に〇をつけさせていただきました。

 

中でも突出して「これ !」と感じた朗読をしてくださった方が、西村さん。今回の優勝者です。表情や動きに引っかかりを感じず、当然お持ちの技術を感じさせることすらなく、さらりとした読みに物語の深みを巧みに織り込んだ朗読は、さすがに何十名もの朗読を聴き続け集中力が途切れかけていたわたしの意識をしっかりと覚醒させてくださったばかりか、もっと聞いていたいと思わせてくれました。会場中が納得する受賞だったのではないでしょうか。

 

最後に、昨年の優勝者である小堀さんがゲストとして登壇され、夢野久作の『人の顔』を朗読されました。この難しい作品世界が小堀さんの朗読によって生々しく表現されると、登場人物の姿かたちが目の前に浮き出てきます。その迫力には息をのまざるをえません。

 

これでお開きとなったのですが、会場を出る時にちょうど、今回とても気になる朗読をされた方が近くにおられることに気が付いたのでお声をかけさせていただきました。表情が自然で明るく、素直な気持ちの良い朗読をされた若い女性です。もちろんコンテスト入賞者ですからみなさんレベルが高いのですが、その中でわたしは特にこの方の朗読をただ「好き」だと感じたのです。

 

「よかったです」「好きな朗読でした」「〇、つけさせていただきました」と話しかけると、その方はとても感激した様子で「おひとりにでも伝わったならよかったです」「ああ、ありがとうございますっ!」と、たいへん喜んでくださいました。

 

わたしにも経験がありますが、一声かけていただけるのって本当にうれしいし、励みにもなります。お伝えできてよかったと心から思いました。

 

こうした場に参加することで、また一段と朗読の素晴らしさや奥深さに触れることができ、とても勉強になりました。関東から新幹線で京都まで、早朝から慌ただしくはありましたが、出かけて良かったと思います。来年は出場できるといいのですが。さて。

 

2017/10/10