ツキ吞み⑯「朗読ライブと立春と雪の思い出の巻」

 

吞みたい気分でツキイチエッセイ

 「朗読ライブと立春と雪の思い出の巻」

 

  小学生の頃、冬の氷点下は当たり前でした。登校する朝、「分団」と名付けられた登校グループの集合場所では、ザクザクした霜柱の土を踏んで音を立てたり、薄く張られた氷の膜を見つけてはわれ先に割ったりするのに忙しく、地面ばかり見ていました。

 

 うつむく目にときおり飛び込んでくる分団仲間の手の、痛々しく真っ赤にふくれたしもやけの指も見慣れていたし、登校する道みちでは踏み固められた雪に滑らぬよう集団についていくのに必死でした。歩道橋や校門前の横断歩道を転ばぬように渡りきるのは命がけでした。

 

 雪もしょっちゅう降りました。「しんしん」という大音量が聞こえるほど降る雪はすぐに凍りました。ふかふかの雪、足の形に凍った雪、土が混じった黒い雪、桜の花びらのように目の前を舞う透き通った雪、雪、雪。

 

「しんしん」の中、傘をたたんでひとりで下校するときの異世界に入り込んだような孤独感は、空想の世界を気ままにさまよい満喫できる解放感に裏打ちされた、守るべき大切なものでした。

 

 今年は雪が多く気温も低く、氷点下のニュースを耳にすれば震え上がって、暖房の効いた部屋にひきこもりたくなります。不用意なまま気まぐれに雪で戯れた家族の濡れそぼった靴やコートを、小言を言いながら乾かします。そっとカーテンを開け外を眺めて、雪が降らないよう、被害がないようにと願います。

 

 そんなときに落ちてくる大粒の雪を、今のわたしは脅威にしか感じていない。そのことをこそ寂しいと、ふと思いました。

 

 

――とはいえ。

寒いのは苦手、乾燥こそ喉の敵 ! 3日、おりしも立春を迎えようとする節分の日の八幡山朗読ライブでも、途中で喉が詰まって語りが途切れてしまいました。普段の鍛錬とライブ前の心がけが足りなかったと反省しきりです。

 

前日や前々日の雪や寒さにもかかわらず、予定を変えずにおいでくださったご来場の皆さまには本当に感謝しかありません。内輪のことを言わせて頂けるならば、出場予定のメンバーがひとりも欠けることなくプログラム通りに進行できたことにも感謝です。

 

まだまだ寒い日が続きます。充分な加湿とマスクの装着とショウガの摂取を忘れずに身体を守って春を迎えようと思います。みなさまもどうぞご自愛くださいますように。

 

2018/2/7