ツキ呑み⑱「朗読が好きですか」

 

呑みたい気分でツキイチエッセイ

「朗読が好きですか」

 

――石の上にも三年

「朗読」に取り組み始めてから丸3年が経過して、今、この格言を強く体感しています。

 

 読むことが好きだったわりには「朗読ができる人」をめざしたことがなかったので、いざ向き合ってみた朗読の難しさには何度も挫折を味わわされました。キャリアを持つ方々の声の豊かさに圧倒されては、到底わたしの出番などないのではないかとも考えましたし、今でもそうした思いはあります。

 

 こんなわたしも先日とうとう、憧れの舞台に立つことができました。それこそ無鉄砲にも朗読をはじめたばかりの頃から毎年応募しては落選してきた朗読コンテストの予選を、今年はついに突破することができたのです。本選出場のプログラムにはこれまでの朗読活動の中で見知った達人のお名前がずらりとならんでいました。それを見たときは緊張したけれど、同じ舞台に立たせていただける喜びはそれに勝りました。当日はただ楽しみ、悔いのない朗読をすることだけを考えることができました。

 

 先日の朗読会でわたしは「朗読が好きという気持ちを大切に活動しています」と挨拶しました。あれやこれやはあるけれど、結局いつも心にあるのは「朗読が好き」というシンプルな気持ちだと確信するに至ったからですが、このシンプルな動機、そういえばあまり聞かないようにも思います。朗読をする人はとても謙虚で、だからまず「聴衆のみなさんに喜んでほしい」と願う言葉を出されることが多いからです。それはもちろん本音であろうし、朗読の本質だと思います。けれど、未熟なわたしがそればかり考え上達を願うばかりになると、朗読が楽しくなくなってしまうおそれがあるのです。

 

 声が出にくくなったり、練習の時間がとれず不安だったり、表現に悩みぬいて頭を抱えたり、人の評価が気になったり、何が何だかわからない気持ちになったり、それはそれはいろいろなことがあるけれど

 

「この日は朗読の場がある。この日は読み語りができる」

それを考えるだけで心から幸せな気持ちになるし、そんな自分が朗読を続けていくことを信じることもできます。

 

 朗読に取り組んでいる方に辛さや迷いがおとずれたとき、どうか「好き」という気持ちを持ち続けてくれますように。

 

 あなたは朗読が好きですか ?

 

2018/12/3